【改訂版1.1】石川祐希選手は本当にサーブレシーブがうまくないのか? – バレーボールのミカタ

【改訂版1.1】石川祐希選手は本当にサーブレシーブがうまくないのか?

ちょっと過激なタイトルで申し訳ないですが、これはこんな記事を読んだときに疑問に思ったので書かせていただきます。そして大きな誤解をいろいろ生んでしまったなと反省したので、ここに来て追記します。追記部分は青や赤で表示いたします(2015.12.12)

【男子バレー】全日本の石川祐希は、大学生の大会で進化できるのか?

結論は少しおいておいて、問題は文章の中身にあります。

中大監督「…(国内と海外で)一番違うのがブロックだと思うんですよね。あとはサーブ。でも、海外のサーブは速いんだけど、じゃあ大学リーグでやっているときの石川のレセプション成功率はどうなの? というとそこまですごくいいわけじゃないんですよ。…」

何を言っているんでしょうね。
大学リーグでのレセプション率は公式に出ている成績は残っていないようなので、チームのデータとして出ているのだと思います。VリーグみたいにA表B表などはないようです。そこで、私は独自に大学リーグの一部の試合を見てみることにしました。ネット動画でざっくり見た感じだと別に大きくサービスエースを取られた訳でもなかったし(そもそも石川選手がレセプションする場面は少ない。サーブで狙われていない)、世界のサーブを相手に比べればセッターがジャンプトスできる範囲内で普通に上げているように見えましたけど。そこで何故こんな記事が出たかというのを考えてみることにしました。実際大きくエース取られるシーンもありました。しかし自分でディグして打ち返すという何とも石川選手らしいプレーをしていました。

そもそもレセプション(サーブレシーブ)成功率とは?

参考にさせていただきました。

サーブレシーブ成功率について – バレーボールのデータを分析するブログ。様より
レセプションとアタックの関係 – e-Volleypedia様より

上記に書かれているのは、あくまでこういった数字は指標ってことで、レセプションがいいからってアタック決定率は上がるわけでもないし、試合の勝敗とレセプションは関係ないよということです。ざっくりですけど。

私も現代バレーにおいてレセプションの成功率なんて勝敗に関係ないと考えています。実際にレセプションというのは世界のトップ選手達の中では「セッターがジャンプトスできる範囲に上げておけばいい」という認識だからです。あんなサーブをAパスで返すなんて無理無理。上でいいんです。そこから攻撃に繋げればいいんです。日本代表チームでもAパスが難しいようなスパイクサーブはとにかく上に上げればいいという認識のはずです。

 

クイックってネット際(Aパス)じゃないと使えないのでは?というのは大きな誤解です。代表でも山内選手や出耒田選手はネットから離れた位置からクイックを打つことができます。そこはまた別の話なので今回は短めに書きますが、レセプションは乱されるという前提でバレーを展開しなくては、ラリーポイント制では戦えません。サーブのお話でも少し触れましたが。

 

石川祐希選手のレセプションは別に悪くありませんよ

サーブの時のお話で書いたように、まずサーブ戦術として、WSの選手はサーブで狙われます。WSに負荷をかけて攻撃に参加させないようにするものだったり、苦手なサーブ(ジャンプフローターをレセプションするのが苦手な選手もいます)を敢えて打ってレシーブを乱したり、意図は様々です。

ですので、多少乱されることはどんなWSでもあるわけです。世界のトッププレイヤーであってもレセプションがうまいという程の選手は少ないですが、そういった選手達がどう考えながらプレーしているかというと、「多少乱されたところからでもスパイクが打てる」。そういったプレーがうまいわけです。チームとしても、ビッグサーブで1セット何本かレシーブを乱されることは初めから想定しており、そこから攻撃に繋げていくことが重要視されているのです。
ですので、石川選手は決してレセプションが悪い選手ではないし、レセプションが乱されることは狙われたりしているので仕方のないことです。石川選手はボールコントロールがとてもいい選手です。数値化したら完璧ではないのかもしれませんが、こういった記事には惑わされないでくださいね。不安を煽るのは良くないと思います。監督には数字を求めるなとまず言いたいですし。数字が少ないと感じるのはAパスに拘っているだけでしょ?というね。拘りというか、記者に聞かれたからそう答えたんだとは思いますが。

 

男子日本代表・龍神ニッポン2015のチームと大学のチームですと、大学の方がレセプションが良くないように捉えられるかもしれませんね。サーブを相手のコートに直接返してしまったりは相手に本来ならば相手にやり返されてブレイクされる危険がとても高いです。ですので、海外チームですとレセプションは高く上に、できるだけ自分達のコート内に入れるためにネット際のAパスではなくネットから遠ざけるのが常識です。

龍神ニッポンと中央大学のチームによって石川選手の様子が違っているように見えるのは、チームにいる時間やコート内にいるメンバーの違いが関係していると考えます。龍神ニッポンのチームですと石川選手は今年はずっとチームにいましたし、ワールドカップに向けてレセプションは誰がどの位置で取るのが一番いいのか大会本番までに試合を繰り返しカスタマイズする時間が十分にありました。

そもそもレセプションはたった1人でするものではありません。3人ですることがほとんどです(もっと必要なら4人、ハイキュー!!でやった2人の「少数精鋭」もありますが)。石川選手だけではなく、リベロの永野健選手、柳田将洋選手もいる中、選手の能力に合わせて誰がどの位置を守ってどのボールを取りに行くのかは十分チームに当てはまっていて選手の能力が活かせていたので、個々の選手のレセプションが良くないと映ることはあまりなかったと思います。同じ選手ですが、チームの戦術によって引き出される能力が異なることは十分に有り得ます。

代わって中央大学ですが、石川選手はレセプションの役割がまた違いますし、また、チームに長くいた訳ではないのでカスタマイズもきちんとできていない状態だったと思います。秋リーグはほとんど場当たりで試合に出ていたのではないでしょうか。2014年から終盤にイタリア~4月から全日本~ワールドカップとほとんどチームから離れていましたし、疲労の説も拭えません。

レセプションを相手コートに返してしまった動画は一見石川選手がレセプションできていないように見受けられますが、そういえば石川選手はポーランド戦でも同じコースでサービスエースを取られたシーンがあったなと思いました。石川選手がライト側にいる時にジャンプサーブを受けるのが少し苦手なように写りました。(もし本当に苦手だと仮定すると)こういった場合は、リベロの選手の守備範囲を広げるかライト側に位置する時にジャンプサーブが来ないようにローテーションを回してスタートするべきだと思います。相手のジャンプサーバーは初めから把握しているはずです。といった感じで、選手の能力を活かす采配が必要になってきます。その辺も選手とコート内とベンチが十分にコミュニケーションを取る必要があります。

確かにレセプションを直接相手コートに返ってしまうのは失点に繋がりかねないプレーですが、全てがAパスじゃなくてもいいんだよ…と思いますね。ていうか、取られた分は取り返せばいいんですけどもね。

 

この手の話は女子の木村沙織選手にもよく思います。ネットで「木村のレセプションが悪いから~」と書かれるのを見かけると憤りを感じるくらいです。木村選手もボールコントロールのいい、レシーブのうまい選手です。そこでサーブで彼女に負荷をかけてくるわけです。敗因は別にあるのです。

完璧な数字を出したとしても試合に勝てるというわけではないですよ

バレーボールは常にネット越しの相手があって成立するスポーツです。その相手がいる限り、自分達がレセプションを100%成功させることができたとしても、勝利に確実に結び付くわけではありません。まず相手がサーブで崩してくるので、レセプション成功率100%を出すことがまず難しいんですけどね。ですので、高い成功率を出したとしても、満足してはいけないんです。レセプションで重要なのは、成功率を上げることではなくて極力サービスエースを取られないようボールを何とか上に上げることです。数字として目指すところというのも目指さなくていいです。問題はそこからで、レセプションを高めたとしても攻撃に結びつけられなければ試合に勝つことはできません。現代バレーではレセプション成功率などほとんど重視されていません。よって、ハイキュー!!においても「レセプション成功率が勝つために重要」なんて言葉は出て来ていません。

日本はそういったバレーを目指さなくてはなりません。いつまでもレセプション成功率に拘っていては男子も女子も世界に勝てません。乱されたところからどうスパイカーへ繋ぐのか?が大切です。
ここまで来て、凄く当たり前のことを書いているなと思われる方もいるかもしれませんが、この【当たり前】ができていないのが今の日本バレーなのです。いつまでも「重要なのはサーブレシーブ」と言う監督が代表監督であったり…。

とにかく数字が完璧ではないから何?と思ったんで、こういった記事を書いてみました。以前から木村選手が揶揄されたりするのも見ていて嫌だったので。石川選手も今後がありますし、負けたときに「石川のレセプションが悪いせいで~」とは言われてほしくありません。石川選手の大学の試合を見ていましたが、これは今この段階だから通用しますが世界は愚かVプレミアリーグで通用しないでしょうねというプレーも多々あったので、その辺はどう本人が切り替えるのか気になります。大学所属チームは勝てていれば選手の成長など関係ないのでしょうけど。

チームの方針の違いもあるのでしょうが、石川選手がレベルアップするにはもうレベルの高いところでプレーさせたり、戦術面の知識を高めたりしてほしいと個人的には思います。

 

別に大学の組織全てを否定したいのではありませんので、あしからず。私が言いたいのは、「誰々が…と個の能力に捕らわれすぎないでほしい」というのと「数字だけで選手を、そしてプレーを評価しないであげてね」というところにあります。チームプレーですので「1人だけ上手くても勝てないんだよ、ドンマイ☆」と及川さん風に…(笑)それよりだったら、より高みで戦術理解度を深めてほしいですね。